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男「小説家になろう」 Tweet
- 2015/12/01
- 06:10
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- 1 :以下、名無しが深夜にお送りします :2015/11/29(日) 14:04:55 ID:lUlqCPo.
- 男「俺、小説家になりたい」
男「どうすればなれるのかな?」
女「そうねえ……。まずその髪の毛をもうちょっとボサボサにした方がいいわね」
男「え、どうして? 人からだらしなく見られちゃうんじゃない?」
女「それでいいのよ」
女「執筆に夢中で、ヘアスタイルを気にしてる余裕なんかないってアピールできるでしょ」
男「なるほど!」
- 2 :以下、名無しが深夜にお送りします :2015/11/29(日) 14:06:31 ID:lUlqCPo.
- 男「どう?」ボサッ
女「おお~、いいじゃない、いいじゃない」
女「髪の毛いじくってる暇なんかないんだよ、って無言の主張が伝わってくるわ」
男「ありがとう。次はどうすればいい?」
女「洋服より和服にした方がいいわね。その方がより小説家っぽいし」
男「分かった!」
- 3 :以下、名無しが深夜にお送りします :2015/11/29(日) 14:08:49 ID:lUlqCPo.
- 男「どうかな?」バッ
女「いいじゃない、いかにも文豪って感じ!」
女「じゃあ、今度は道具を揃えなきゃね。万年筆を買いましょう」
男「万年筆? 今時の小説家って、みんなパソコンで書いてるんじゃないの?」
女「なぁにいってんの。万年筆じゃないと雰囲気が出ないじゃない」
女「それにパソコンでカタカタ執筆、だなんて風情がないでしょ」
男「それもそうか」
- 4 :以下、名無しが深夜にお送りします :2015/11/29(日) 14:11:04 ID:lUlqCPo.
- 男「万年筆を購入したよ!」サッ
女「わぁっ、かっこいい! すっごくいい文章書けそう!」
男「だけど万年筆って結構高いんだね。これ1万円もしたよ」
女「なにしろ万年っていうぐらいだしね」
女「だけど、中には100万円以上する万年筆もあるっていうわよ」
男「ひえぇ……万年筆ってすごいんだなぁ」
男「道具も揃えたところで、次はどうしようか」
女「小説家になるなら、やっぱり書斎が欲しいわね」
男「書斎かぁ……。俺、今アパート暮らしなんだけど、大家さんに頼んでみるか」
- 5 :以下、名無しが深夜にお送りします :2015/11/29(日) 14:14:33 ID:lUlqCPo.
- 男「すみません、アパート改造して書斎作ってもいいですか?」
大家「いいよ!」
男「あっさり快諾してもらえて、書斎を作ったよ」ジャーン
女「まぁっ、ステキなお部屋!」
女「マホガニー製の机、天井に届く本棚、無駄にぶ厚い本、どれをとっても素晴らしいわ」
男「あのぶ厚い本の数々は、多分一生読まないだろうけどね」
男「さて、他にやることはあるかな?」
女「本を出版した時に使う、著者近影を撮影しましょう!」
- 6 :以下、名無しが深夜にお送りします :2015/11/29(日) 14:16:36 ID:lUlqCPo.
- 男「……」ビシッ
女「うーん、まるで証明写真ね。もっと悩ましげな表情とポーズの方がいいわ」
男「こう?」クイッ
女「お、いいじゃない。いい文章が書けなくて悩んでる、って顔してるわ」
男「実際には親知らずをどうしようかで悩んでるんだけどね。抜くべきか、抜かぬべきか」
女「ハイチーズ!」パシャッ
男「おお、いいねえ! どこからどう見ても、気難しい文豪にしか見えないよ!」
男「あとなにか必要なものってあるかな?」
女「そうねえ……やっぱり編集者は欲しいところね」
男「編集者か……。友達に出版社勤めの奴がいるから、そいつに頼んでみるか」
- 7 :以下、名無しが深夜にお送りします :2015/11/29(日) 14:19:50 ID:lUlqCPo.
- 友「先生! 原稿はまだですかぁ~!? 締め切りはとっくに過ぎてますよぉ!?」
友「このままじゃ雑誌に穴が空いちゃいますよぉ~! どうしてくれるんです!?」
友「……これでいいのかい?」
男「うん、実によかったよ! やべぇ、まだ白紙だよ……って気分になれたよ!」
男「それじゃ、今のを週に3回ぐらい頼むよ」
友「お安い御用さ」
男「いよいよ、俺も本格的に小説家っぽくなってきたな。あとはどうすればいい?」
女「そうねえ。やっぱり作家たるもの、自殺未遂の経験くらいあった方がいいわね」
男「自殺未遂かぁ……ちょっと怖いなぁ」
女「カッターナイフで手首をちょっと切ればいいのよ。平気、平気」
- 8 :以下、名無しが深夜にお送りします :2015/11/29(日) 14:22:11 ID:lUlqCPo.
- 男「えいっ!」チクッ
男「こんなものでいいかな? 1ミリほど傷をつけただけだけど。血も出てないし」
女「ええ、こんなものでいいわ」
女「ようするに、自殺をしようとしたっていう事実が大事なんだから」
男「なるほどね」
男「これで俺も、ようやく小説家だ!」
女「――待って! やることはまだあるわ!」
- 9 :以下、名無しが深夜にお送りします :2015/11/29(日) 14:25:17 ID:lUlqCPo.
- 男「くっそぉ~! 今年も○○賞に落選した!」クシャクシャッ
男「なぜ、このような低俗な作品が入賞するのだぁっ! バカな審査員どもめ!」ポイッ
男「どう?」
女「いいじゃない! 実力はあるけど、なかなか賞に恵まれない作家みたいだったわ!」
男「といっても、俺は落選するしない以前に、作品を一つも書いてないし」
男「入賞した作品を読んでみたけど、メチャクチャ面白かったけどね」
女「個人的な事情や感想はどうでもいいの。悔しがらないと小説家っぽさが出ないの」
男「小説家になるって大変なんだなぁ」
男「だけど……これでやっと、やっと俺も小説家になれたんだね」
女「ええ、華々しくデビューしましょう!」
- 10 :以下、名無しが深夜にお送りします :2015/11/29(日) 14:27:47 ID:lUlqCPo.
- ~
司会「あなたは小説家なんですって?」
男「ええ、小説家です」
司会「ちなみに、どんな作品を書いておられるんですか?」
男「なにも書いてません」
司会「小説家ちゃうんかい!」
どっ……!
~
- 11 :以下、名無しが深夜にお送りします :2015/11/29(日) 14:30:15 ID:lUlqCPo.
- ~
男「これが、この町の名物のおまんじゅうですね」
男「ではいただきます」モグッ
男「……うん、おいひぃ~! 上品な甘さで、とてもデリィシャスです!」
男「皮とあんこの絶妙なコラボレーション! ほっぺたが落ちそうですよぉ!」
店主「ありがとうございます」ニコニコ…
~
- 12 :以下、名無しが深夜にお送りします :2015/11/29(日) 14:32:38 ID:lUlqCPo.
- ~
実況『今回、始球式を務めますのは、小説家の男さんです!』
男「えいっ!」シュッ
ズバンッ!
実況『おおっ、すばらしい投球! ありがとうございましたーっ!』
~
- 13 :以下、名無しが深夜にお送りします :2015/11/29(日) 14:35:09 ID:lUlqCPo.
- ~
<アフリカに井戸を掘れ! 人気小説家の挑戦!>
男「ハァ、ハァ……水出ねえなぁ……」ザクッザクッ
ブッシャアアアアア!
男「おおっ、水が出たぁっ! やったぁ!」
現地人「アリガト、アリガト」ガシッ
男「いや、みんなが協力してくれたおかげだよ……!」ギュッ…
~
- 14 :以下、名無しが深夜にお送りします :2015/11/29(日) 14:38:02 ID:lUlqCPo.
- ~
男『この世の中を変えたい! ……という情熱をもってこのたび出馬いたしました!』
男『わたくしに任せていただければ、この国はもっとよりよい国になります!』
男『皆さま、どうかわたくしに清き一票を、お願い致します!』
パチパチパチ……! ワアァァァ……
~
- 15 :以下、名無しが深夜にお送りします :2015/11/29(日) 14:42:12 ID:lUlqCPo.
- ~
アナウンサー『人気小説家の男氏が、妻に暴力を振るっていたことが明らかになりました』
アナウンサー『まもなく、記者会見が開かれるもようです』
パシャッ! パシャシャッ! パシャッ!
男「このたびはこのような不祥事を起こしてしまい、誠に申し訳ありません」
記者「なぜ奥さまに暴力を?」
男「小説家たるもの、不祥事のひとつやふたつ起こさないと、と妻にいわれまして……」
男「しばらくは執筆活動を自粛するつもりでおります」
パシャッ! パシャシャッ! パシャッ!
~
- 16 :以下、名無しが深夜にお送りします :2015/11/29(日) 14:45:21 ID:lUlqCPo.
- ~
人気小説家の男さんがアニメ監督に初挑戦!
天国と地獄と現世がくっついてしまうという、超エンターテイメント作品!
劇場アニメ『天地崩壊 ~作画も崩壊~』
○月×日より、全国ロードショー!
~
- 17 :以下、名無しが深夜にお送りします :2015/11/29(日) 14:49:18 ID:lUlqCPo.
- ~
記者「――エベレスト登頂成功、おめでとうございます」
男「ありがとうございます」
記者「今のお気持ちはいかがですか?」
男「達成感と……あと生きて帰ってこれてよかったという気持ちが同居してますね」
記者「このエベレスト登頂体験を本になさるおつもりはありますか?」
男「今のところ、そういった予定はないですね」
~
- 18 :以下、名無しが深夜にお送りします :2015/11/29(日) 14:52:33 ID:lUlqCPo.
- ……
……
テレビ『本日未明、小説家の男さんが自宅で心不全のため亡くなりました。93歳でした』
テレビ『なお、葬儀は身内だけで行われるということです』
テレビ『亡くなる寸前、男さんは雑誌のインタビューに対して』
テレビ『小説書く以外のことはだいたいやった。いい人生を送れた、と語っており……』
おわり
- 19 :以下、名無しが深夜にお送りします :2015/11/29(日) 14:52:50 ID:.ujD0KVg
- 小説家とは一体...(哲学)
- 21 :以下、名無しが深夜にお送りします :2015/11/29(日) 16:11:13 ID:2r0KbIJA
- 乙
笑った
- 20 :以下、名無しが深夜にお送りします :2015/11/29(日) 15:08:35 ID:W1bMu5q6
- 万年筆を手に入れたなら手漉き和紙とか無駄に凝った原稿用紙も揃えて頂きたかった、惜しい
小説家万能w
- 24 :以下、名無しが深夜にお送りします :2015/11/29(日) 19:26:35 ID:6VHHzDbs
- おつ
面白かったー
- 22 :以下、名無しが深夜にお送りします :2015/11/29(日) 16:29:37 ID:I10OVNk2
- 異世界に転生してもやってけそうな最強の小説家だな
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